「深部体温」と「脳波」の真実。疲れているのになぜ眠れないのか?
滋賀県守山市で整体、睡眠の事ならストレッチ×整体HOPE。日々の施術の中で、多くのアスリートやビジネスパーソンのクライアント様から最も多く寄せられる悩みのひとつ。それが「睡眠」です。
「体は疲れているはずなのに、布団に入ってもすぐに眠れない」
「夜中に何度も目が覚めてしまい、朝の疲労感が抜けない」
特に、デスクワークでPCを長時間使用される方や、極限まで集中してトレーニングを行うアスリートの方に、この傾向が強く見られます。「リラックスしてください」と言うのは簡単ですが、具体的にどうすれば正しい「リラックス(入眠準備)」ができるのでしょうか?
今回は、経験則や感覚だけの話ではなく、「眼周囲の加温(目を温めること)」が睡眠に与える影響について、信頼できる科学論文(エビデンス)を基に、その驚くべきメカニズムを解説します。
目を温めるは最強の「入眠儀式」
結論から申し上げますと、目を温めることは、単なる気休めのリラクゼーションではありません。それは、人体の生理学的なスイッチを利用した、最強の「入眠儀式」となり得ることが科学的に証明されています。
エビデンス1:世界的権威ある科学誌が示した「客観的データ」
まずご紹介したいのは、2020年に世界的権威のある科学誌『Scientific Reports(Nature Portfolio)』に掲載された、Ichibaらによる研究論文です。
この研究では、健康な成人を対象に、「就寝前に約40℃の蒸気アイマスクで目を温めた場合」と「温めなかった場合」で、睡眠の質にどのような違いが出るかが厳密に測定されました。
ここで特筆すべきは、単なるアンケート調査ではなく、脳波(EEG)を用いた客観的なデータ測定が行われたという点です。その結果、以下の2つの極めて重要な事実が判明しました。
1. 入眠潜時(眠りにつくまでの時間)の短縮
目を温めたグループは、ベッドに入ってから入眠するまでの時間が有意に短くなりました。つまり、「布団に入ってからダラダラとスマホを見てしまう時間」や「考え事をしてしまう時間」が物理的に減少し、スムーズに睡眠状態へ移行できたことを意味します。
2. 深い睡眠(デルタ波)の増加
さらに驚くべきは、睡眠の「深さ」です。脳波の解析により、睡眠の前半部分において「デルタ波」と呼ばれる徐波睡眠(深い睡眠)のパワー値が増加していることが確認されました。
睡眠において最も重要とされる「最初の90分」の質が、目を温めるだけで向上したのです。これは、身体の修復や成長ホルモンの分泌が活発に行われる時間帯の質が高まったことを示唆しており、アスリートのリカバリーという観点からも見逃せないデータです。
メカニズム解説:なぜ「目」なのか?鍵は「手足の熱放散」
では、なぜ「目」を温めるだけで、全身の睡眠状態が変わるのでしょうか?
「目が気持ちいいからリラックスした」という精神的な理由だけではありません。ここには、DPG(Distal-Proximal Gradient)と呼ばれる、体温調節のメカニズムが深く関わっています。
良質な睡眠に入るためには、私たちの「深部体温(脳や内臓の温度)」が急速に下がる必要があります。
深部体温を下げるためには、手足の末梢血管を拡張させ、そこから熱を外に逃がす(放熱する)必要があります。赤ちゃんが眠くなると手足が温かくなるのは、まさにこの「放熱」を行っているからです。
先述の研究では、目を温めることで、以下の生理的連鎖が起きることが確認されています。
-
眼周囲の加温刺激
温かさが三叉神経などを刺激する。 -
血管拡張の指令
脳が「熱を逃がせ」という指令を出す。 -
末梢皮膚温の上昇
手足(特に足先)の血管が開き、血流が増加する。 -
深部体温の低下
手足から熱が逃げ、結果として脳や内臓の温度が下がる。
目を温めるは深部体温を下げるトリガー
つまり、目を温めるという行為は、「手足のスイッチ」を強制的にオンにし、深部体温を下げて脳をクールダウンさせるためのトリガー(引き金)として機能しているのです。
「冷え性で足が冷たくて眠れない」という方が多いですが、足を温めるだけでなく、目を温めることが、結果として手足を温め、深部体温を下げる近道になるというのは、非常に興味深い生理反応です。
エビデンス2:自律神経と「主観的な疲労回復」
次に、メンタル面や自律神経への影響についても触れておきましょう。
2017年の『Journal of Physiological Anthropology』に掲載された研究や、関連する自律神経の研究論文では、以下のことが示唆されています。
副交感神経への切り替え
現代人の多くは、夜遅くまでLEDライトやスマートフォンのブルーライトを浴びており、交感神経(興奮モード)が優位なまま布団に入っています。
研究によると、眼周囲、あるいは首元を温めることで、副交感神経活動が有意に上昇し、心拍数が低下することが確認されています。これは、身体が「戦闘モード」から「休息モード」へと強制的に切り替わったことを意味します。
主観的な「回復感」の向上
冷え性を自覚する女性を対象とした実験では、就寝前の加温により「熟睡感」や、翌朝の「リフレッシュ感」といった主観的な評価が大きく向上しました。
データ上の数値だけでなく、実際に「あぁ、よく寝た」と感じられるかどうかは、日々のパフォーマンスや気分の安定において非常に重要です。
専門家が提案する「睡眠の質を上げる」実践メソッド
HOPE推奨:アイ・ウォーミング・ルーティン
以上の科学的根拠を踏まえ、具体的な実践メソッドをご提案します。
研究データでは、加温によって末梢皮膚温が上昇しきるのに少し時間がかかります。ベッドに入る直前も良いですが、理想は就寝の約30分前です。お風呂上がりのスキンケアの後や、明日の準備を終えたリラックスタイムに行うのがベストです。
熱すぎると交感神経を刺激して逆効果になる可能性があります。心地よいと感じる40℃程度が最適です。市販の蒸気が出るタイプのアイマスクや、電子レンジで温める小豆のアイマスクなどが手軽で便利です。
目を温めている間は、当然ながらスマホを見ることができません。実は、これこそが隠れた最大のメリットです。強制的に視覚情報を遮断(デジタルデトックス)することで、脳への情報入力をストップし、脳疲労を物理的に休ませることができます。
睡眠は健康への投資
「睡眠」は、トレーニングや食事と同じくらい、あるいはそれ以上に重要な「身体への投資」です。 高価な寝具を買い揃えるのも一つの手ですが、まずは今日からできる「目を温める」習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか? 特に、当院に来院されるような、日々身体を酷使しているアスリートの方、常にPCと向き合っているビジネスパーソンの方には、この「深部体温を下げるスイッチ」の活用を強くお勧めします。 睡眠の質が変われば、翌日のパフォーマンスが変わり、身体の柔軟性やリカバリー速度も確実に変わります。 「眠りの浅さ」や「慢性的な疲労」にお悩みの方は、ぜひ一度、施術の際にもご相談ください。筋肉の緊張を解くだけでなく、睡眠の質を高めるための生活習慣アドバイスも含めて、トータルでサポートさせていただきます。
参考文献:1. Ichiba T, et al. "Periocular skin warming promotes body heat loss and sleep onset: A semi-constant routine study." Scientific Reports, 2020.
2. "Effects of Bedtime Periocular Warming on Sleep Status in Adult Women with Self-Reported Cold Hypersensitivity." Journal of Physiological Anthropology, 2017.
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